荒谷あきこ滋賀草津きもの着付け教室
主宰:荒谷あきこ
(国家資格 一級着付け技能士)
保管・お手入れ方法
着物を着た後の
保管やお手入れの方法が
よく分からないと
ご相談を受けることがあります。
和服の保管に適さない場所や
着用後に洗わずに片付けると
どうなるでしょうか?
数年後にはカビが生えて
シミだらけになるかもしれません。
カビ??!
そうなんです。繊維にカビが生えるんです。
よく見かけるのが着物の裏地です。
本来、裏地(=胴裏)は白ですが
カビが生えると茶色いシミが点々と現れ、
それが少しずつ広がって
生地全体が茶色になってしまいます。
カビは着物だけでなく帯にも生えます。
カビのシミは洗濯では落ちないので、
綺麗にするためには
着物をほどき、洗い張りをした後
仕立て替えしなければなりません。
せっかくの大切な和服をカビなどから守り
ずっと綺麗なまま保つための方法を
ご紹介します。
🔶目次
1.保管場所
2.虫干し(=風通し、換気)
3.防虫剤の種類
4.着用後のお手入れ
5.自宅で洗える素材の種類
🔸1.保管場所
カビは四つの条件がそろうと生えると言われています。
「水分(=湿気)、温度、栄養、酸素」
これらのうち一つでも抑えることができれば
カビの発生を防ぐことができます。
和服の保管では
水分つまり湿気を防ぐことが最も大切です。
保管場所のポイント!
・家屋では一階よりも二階が適している
・風通しの良い場所
・桐タンスが最適
(吸湿性と放湿性があり通気がよい)
・タンスの上段に礼装品、下段に普段用を入れる
・密封性の高いプラスチック衣裳ケースは避ける
(湿気が中にこもり、カビが生えやすくなる)
🔸2.虫干し(=風通し、換気)
虫干しとは
着物を干して湿気を飛ばし、
カビを生えにくくしたり
繊維に虫がつかないようにする
お手入れのことです。
虫干しの時期は年三回あり
この時に防虫剤の入れ替えをされることを
おすすめします。
・梅雨明け後(7月~8月初旬)
・秋晴れの続く頃(10月中旬~11月頃)
・空気が乾燥している頃(2月頃)
着物を干すのが難しい場合は
タンスの引き出しを階段状に開けて
扇風機やエアコン・乾燥機などで
換気されてみてください。
これだけでも効果があります!
🔸3.防虫剤の種類
主に4種類があります。
①ピレスロイド系
②パラジクロルベンゼン
③ナフタリン
④しょうのう
ピレスロイド系は他の薬剤と併用できますが、
②~④ は違う種類の薬剤と併用すると
着物が変色する場合があります。
(ピレスロイド系が使いやすいですね!)
前回入れた防虫剤と
違う種類のものを使う場合は、
しばらくタンスを開けて
薬剤が抜けきってから
ご使用されるとよいでしょう。
防虫剤は上から下へ効果が広がります。
ただし、着物や帯の上に
直接置かないようご注意ください。
🔸4.着用後のお手入れ
着物をいつまでも美しく保つための
大切なポイントを紹介します。
①陰干しで湿気を取り除く
②汗と汚れをチェック
③クリーニングに出すタイミング
①陰干しで湿気を取り除く
着用後は着物用のハンガーにかけ、
直射日光の当たらない風通しの良い室内で
2時間~半日程度陰干します。
直射日光だけでなく、蛍光灯の明かりでも
生地を傷める場合があるので、
カーテンを閉め、電気を消した状態で
干すことをおすすめします。
長時間ハンガーにかけたままにすると
色が褪せてきたり
重力で生地が伸びてしまうことがあるので
ご注意ください。
②汗と汚れをチェック
汗や汚れを放置したままにしておくと
シミや虫食いの原因になります。
汚れを見つけた場合は
できるだけ早く落とした方が
生地の負担が少なく済みます。
「着物の汚れ落としにベンジンを使う」という
情報を耳にされたことがあるかもしれません。
ベンジンは揮発油のことで
油溶性の汚れ*を落とすことができます。
*例/ファンデーション, 口紅, 皮脂汚れ
しかし、無理にこすると
摩擦によって生地を傷めてしまうだけでなく、
処理の仕方によっては
汚れを広げてしまったり
”輪染み”と呼ばれるシミができることがあります。
また、水溶性・不溶性の汚れなど* *は
ベンジンでは落とせません。
**汚れの例
水溶性/ワイン, コーヒー ,紅茶, 雨, 汗, みそ汁
不溶性/マスカラ, 泥はね, 錆
その他/カビによるシミ, 酸化によるシミ
汚れの種類と特性がわからない時や
輪染みができてしまうかも…など
すこしでも不安がある場合は
ベンジンでの対処は避け、
着物お手入れ専門店に相談するようにしてください。
また、汚れているように見えなくても
着物や帯は汗をたくさん吸収しています。
汗を放置しておくと
カビやシミの原因になります。
タンスに片付ける前に
必ず洗うようにしてください。
この時注意していただきたいのが
「自宅で洗えるもの・洗えないもの」を
きちんと区別することです。
洗えないものをご自宅で洗濯すると
色落ちしたり、縮んだりしてしまいます。
ご自宅で洗えない着物や帯などは
着物お手入れ専門店に任せるようにしてください。
③クリーニングに出すタイミング
自宅で洗えない着物や長襦袢を
着物お手入れ専門店に出すタイミングは
着用する頻度と汚れ具合によって
判断してみてください。
▷ワンシーズンに何度も着る着物
ワンシーズン(2-3ヶ月)に何度か着て、
シーズン終わりに洗いに出します。
▷半年以内に着る予定がない場合
振袖・訪問着・留袖など
しばらく着る機会がないものは
着用後できるだけ早く、
一ヶ月以内に洗いに出しましょう。
▷汚れたり、汗をたくさんかいた場合
雨にぬれたり、料理をこぼしたりなど
汚れてしまった場合は
すぐに洗いに出します。
お手入れが遅くなるほど落ちにくくなります。
🔸5.自宅で洗える素材の種類
自宅で洗えない/絹・ウール
自宅で洗える/綿・麻・化繊
※化繊とはポリエステル、レーヨンやキュプラなど
▷こんな時は専門店に任せましょう!
・素材が絹やウール
・箔や刺繍、絞りなどの装飾がある
・シミや汚れがある
・洗濯表示マークがない
・帯は専門店にお任せする
▷自宅洗濯で気を付けること!
・洗濯表示マークを確認する
・洗濯前に色落ちと生地が縮まないか確認する
(洗える素材であっても縮む可能性がある)
・中性洗剤を使う(注意事項要確認)
・洗濯後は室内で陰干しする
・少しでも不安があるときは専門店に任せる
また、洗剤は注意書きも確認し、
使えない素材に当てはまるときは
別の洗剤をご使用ください。
🔶まとめ
着物が普段着であった頃は
素材が綿・麻が主流だったので
家庭で洗うのが当たり前でした。
また、絹のような水に濡れると縮む着物は
洗い張り*後、仕立て直していたそうです。
※着物を解き反物状態に戻し、洗うこと
しかし、今は家庭で洗い張りをしなくなり
着物のお手入れを専門店に
お任せするようになりました。
普段着なくなったことで
着物への敷居が高くなり、
洗濯(=洗い)や保管に
手間がかかるイメージがあるかもしれませんが
着付けを習い、着物を着るようになると
またまた身近なものとなり
片付けや洗濯どうすればいいの?
と、知りたくなるのではないでしょうか。
和服の保管で大切なのは
湿気を防ぐこと
洗濯は素材を確認し
自宅で洗えないものや
汚れやシミがあるものは
必ず専門店に任せること
和服は正しいお手入れをすることで
何十年にも渡って着ることができます。
着物を楽しみながら
次の世代に引き継いでいただけますと
幸いです。